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● 作品について ●
当プロジェクトは第5回横浜山手芸術祭の公式プログラムとして、同地西洋館の一つで横浜市認定歴史建造物である「ベーリックホール」にて制作公開されたインスタレーションアート作品です。
横浜山手地区は幕末以降の異国人居留地であったという特異な歴史を背景に、この地が擁する外国人墓地や西洋館群等の地域資源を軸にした独自の街づくりを推進しているエリアです。同芸術祭はこの地で毎年2月に催されるもので、地域活性化と文化振興を目指し、音楽、美術、演劇、ダンス、古典芸能、文学等の多彩なジャンルにわたる総合的な芸術交流をアートNPOや地元団体施設の連携により展開しています。
この1か月に渡るアートの祭典のオープニング公式プログラム「Old and New ―ベーリックホールにつくる現代空間―」としてMoNoはインスタレーションアート「分子の森 -Molecular Cluster-」を制作し一般公開しました。会場は横浜市が同地区にて所有保存し公開する西洋館7館の中で最大規模を誇るベーリックホールです。米国人建築家J.H.モーガン氏が英国人貿易商B.R.ベーリック氏のために1930年に設計した邸宅で、1956年以降はセント・ジョセフ・インターナショナルの寄宿舎として使用さていましたが2001年に横浜市所有となり復元工事を経て現在は一般公開されています。芝や植栽が美しく整備された600坪の敷地内に建つその建物は、オレンジ瓦とアーチ開口部のスタッコ壁が特徴の当時の米国で流行のスパニッシュスタイルが基調ですが、2階部にはイスラム風モチーフの小窓が配されエキゾチックな風情を持つ外観となっています。内部はベージュ色の壁にダークオーク色の梁や造作枠とモスグリーンの鉄製開口部で統一され、玄関ホールや階段部には白黒2色のモダンな床タイルや重厚なアイアンワークが施されています。
このような空間の中のリビングルームにて作品「分子の森-Molecular Cluster-」は披露されました。3方向から豊かな自然光が入るこの部屋は玄関ホールすぐ横に配され、パームルームと称するサンルームを携えてその広さは約100㎡となります。建物が誕生して80年間、おそらくここは様々な人々が集いそして触れ合う交流の場であったのでしょう。そこで私達はこの空間でインスタレーションアートを制作するにあたり、この場に刻まれている記憶の可視化をテーマとすることとしました。一つ一つの記憶の個体は時空を超えて繋がる空間の記憶となり、分子構造モデルのような連結の様相を呈します。記憶を表現するマテリアルにはクリアーバルーンを採用しました。無重量感および可視と不可視の境界線上にあるようなその存在感が選択の理由です。約1000個のバルーンが同一の手法で連結され長い記憶の房を表現します。この記憶は緩やかな円弧を描きながら宙に浮き訪れる人々を取り巻きます。或いは部屋の片隅に積上げられ又は足元に転がっています。人々はバルーンの房の間を自由に歩き回りながら、美しいリビングルームの内装を楽しむと共に不思議な記憶の分子群を体感することとなります。そして人々がここを訪れた事実もまた新たな空間の記憶として加えられて行くのです。期間限定で可視化されて出現した空間の記憶、それがこの「分子の森 ―Molecular Cluster―」なのです。
<概要> 催 事 : 第5回 横浜山手芸術祭
会主催 : 横浜山手芸術祭実行委員会
会共催 : 財団法人横浜市緑の協会
横浜市中区役所
横濱西洋館de古楽実行委員会
会場 : 横浜市認定歴史的建造物
「ベーリックホール」
リビングルーム
横浜市中区山手町72
tel 045-663-5685
期間 : 2011年1月30日(日)
~2月4日(金)
09:30~17:00